原材料の受け入れから最終製品までの各工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害要因を分析(HA)した上で、危害の防止につながる特に重要な行程(CCP)を継続的に監視・記録する行程システムです。

1993年に、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)が、HACCPの具体的な原則と手順(7原則12手順)を示し、食品の安全性をより高めるシステムとして国際的に推奨。

※HACCPは、行程管理のシステムであり、それ自体が必ずしも施設設備を求めている訳ではありません。※HACCPは、事業者がそれぞれの工場における食品製造工程について、主体的に危害要因を分析し管理システム設定・運営するもの。(何をどこでどのように管理するかを事業者自らが考え、設定し、実施し、その証拠を残すという一連の作業システム)


HACCPの7原則12手順とは

■危害要因分析のための準備段階

手順1:HACCPチームの編成

手順2:製品についての記述

手順3:意図する用途の特定

手順4:製造工程一覧図の作成

手順5:製造工程一覧図の現場での確認

■危害要因分析、HACCPプランの作成

手順6:危害要因の分析 (原則1)

手順7:重要管理点(CCP)の決定 (原則2)

手順8:管理基準の設定 (原則3)

手順9:モニタリング方法の設定 (原則4)

手順10:改善措置の設定 (原則5)

手順11:検証方法の設定(原則6)

手順12:記録の保持 (原則7)

 

※参照資料:農林水産省ホームページ抜粋


手順6・原則1の「 危害分析」とは


危害分析という言葉は、日常ではほとんど使われていないですよね。

食品衛生の工程管理システムの運用の中では使われている言葉です。

HACCPの中の、「HA」の部分の直訳が危害要因の分析となります。

これは「手順6・原則1」となりHACCPシステム導入の入り口になります。

食品における危害は、「B・C・P」に分類されています。

Bは生物学的危害(bio)菌や寄生虫Cは科学的危害(chemical)農薬・洗剤・薬品・アレルゲンPは物理的危害(physical)金属片・ガラス片・石・木等 の頭文字のスペルです。これらの危害度を「重篤度×頻度」で評価します。 まずは、生産工程のフロー図を作成します。次にそれぞれの工程の中でリスクを検討します。

例えば原材料では?

●原材料がそもそも腐っているかもしれない

●原材料に異物(石・夾雑物・等)が入っているかもしれない

●原材料に農薬が混入しているかもしれない

色々な、「かもしれない」を出してみて、重篤度×頻度で評価していきます。原材料の工程では、仕入先からの情報を再度確認。問題がないかを評価します。これが危害分析です。心配をするとキリがないので、発生可能性で調整します。(地球が爆発するかもしれないとかは頻度が少ないのでないものとします。)これを製造工程すべてで評価することが危害分析となります。


手順7・原則2の「重要管理点」とは


HACCPの中の、「CCP」の部分の直訳が「重要管理点」となります。

「危害分析」が出来たら製造工程における「CCP」を決めます。工程上、危害要因を管理する為にモニターされる工程のことを言います。

「危害分析」で作成したフローを基に、どの工程が「CCP」になるかを判断します。 食

品を作るうえで、大切ではない工程などないので、全てを「CCP」にしなければならないと考える人もたまにいます。確かに全て大切ですが、その中でも、危害分析で分類した「B・C・P」の危害の除去を完全に出来る工程を決めて管理します。

例えでよく出るのは、加熱工程での温度管理と包装後の金属探知機です。加熱温度が管理できていれば、食中毒菌が死滅しうる温度設定の工程で必ず、食中毒菌のリスクは一度なくなります。金属探知機を通過して、金属探知機が無反応であれば設定以上の金属片はその時点では入っていないことになります。

これは、「かもしれない」ではなく、「絶対」です。広くお客様に食べてもらう食品製造業において、たぶん大丈夫ではなくて、この工程が「設定どおりの条件で運用しているので安全です」と言える製品を作れて出荷できるのは大きいと思います。

よく「CCP」とその他の工程での不適合品の取り扱い方法の話がでます。「CCP」で不適合が出た場合は、即ラインから外す。その他の場合は、確認して修正して対応する。その目安で「CCP」を決めると良いと思います。


手順8・原則3の 

「管理基準(CL:critical limit)」とは


「管理基準」とは、危害要因を管理するうえで、許容できるか否かを区別するモニタリング・パラメータ(監視すべき指標、数値)の基準のことで、「許容限界」ともいいます。

例えば、生乳中に存在する可能性のある病原菌を加熱によって制御しようとする場合に、殺菌条件を65℃・30分間より緩い条件で加熱した場合は、病原菌が生き残る可能性があります。

このように、製品の安全性を確保できるかできないかの境目のモニタリング・パラメータの値(限界値)を[管理基準(CL)」といいます。

もし、管理基準が誤って設定されていると、ハザードの発生に結びつくので、科学的なデータに基づき、正しく設定されなければなりません。

管理基準の対象として次のものが挙げられます。

●標的微生物などの危害要因が確実に死滅、除去または許容範囲にまで低減されていることを確認する上で最適な指標で、かつ科学的 根拠で立証された数値である事。

●誰でも、可能な限り、リアルタイムに、容易に、判断できるものを指標として用いる必要があります。

例えば温度、時間、pH、水分活性(Aw)等の値や、外観・テクスチャー(質感)などの官能指標などがあります。

専門的な知識が必要とされる、重要な項目です。


手順9・原則4の

「モニタリングシステム」とは


モニタリングとは、CCPが適正に管理されていることを確認する為に、また検証時に使用できる正確な記録をつける為の、観察、測定、試験検査などを行う事をいいます。

CCPには、管理基準(CL)が定められていますので、連続的(又は頻度高く)に監視することによって 逸脱が起きた場合にただちに管理状態が適切でないと判断することができます。

食にとって、モニタリングは安心材料です。

モニタリング方法を決めるポイント

・何を       CCPがCLの範囲で管理されていることを確認の方法をどうするか

・どのように    迅速で正確な物理的,化学的または官能的な測定ができるように

・頻度       連続的または相当の頻度で行う

・だれが      モニタリング方法について教育訓練を受けた従事者(担当者を決める)

テレビ番組でも、「モニタリング」と使われるこの言葉、食品にとっても身近に感じることができる時代になりました。


手順10・原則5の

「改善措置」とは


改善措置とは、CCPにおけるモニタリングの結果、 CL(管理基準)を逸脱した場合のように、 CCPが、適切にコントロールされていないことが認められたときに講じる措置のことを言います。

改善措置として盛り込む内容として次のものが考えられます。

・工程の管理状態を元に戻すための措置

・製品に対する措置

・改善措置実施担当者

・改善措置実施記録

逸脱の影響を受けたとされる製品の範囲を特定し、安全性を保証できない製品は、工程や正常品から完全に隔離し、逸脱した原因を正す措置を講じるとともに、工程を管理状態に戻す一連の作業を、速やかに且つ正しく行えるよう、あらかじめ手順を定めたものが、改善措置です。 定めておくことで、逸脱時に担当者があわてないで、落ち着いて正しい判断が取れるなどの利点があります。


手順11・原則6の

「検証手順の設定」とは


検証には、2つの側面があります。

「計画通り実行されているか」の検証と、 「計画通りに実行していけば安全が保障されるのか」の検証です。

具体的に言うと、

・記録の点検

・モニタリング作業の現場での確認

・原材料や製品の試験検査による確認

・モニタリング測定機の測定器の読み(出力)と、入力または測定の対象となる値との関係を比較する作業。

・消費者からの苦情などの原因の解析

・全体の見直し

といった、検証内容があります。 定期的な検証により、自身のHACCPプランの実態を正しく認識でき、HACCPプランの改善へつなげることができます。


手順12・原則7の

「記録の保持」とは


HACCPプランに関する記録を保管することは、工程管理がHACCPの原則に基づき実施されたことを証明する重要な証拠になります。

また、問題が生じた際には工程ごとに管理状況を遡り、原因追及の助けとなります。

保管する記録には、一般的衛生管理の実施記録(施設清掃、受水槽等清掃、水質検査、補修改善、殺そ・殺虫実施記録等)、モニタリング記録、改善措置実施記録、検証の実施記録などがあげられます。

記録用紙の一般的な保存期間は1年間のところが多いです。

(HACCPの規定として保存期間が決められはいません。)

しかし、製品のライフサイクルが長い製品に関する記録は、これよりも長く保管するほうが良いでしょう。